2010-01-01から1年間の記事一覧

245 宗教を科学する(31) 見栄もある、夢精もある。

ノラ猫たちとさまよったボクの仏教入門 245 245 宗教を科学する(31) 見栄もある、夢精もある。あっちにぶつかり、こっちにぶつかり、煩悩の密室を転げまわる川口さんの心情をしばらく日記から察していくことにしよう。「施設を見学した人が『隔絶された園…

244 宗教を科学する(30)人間の楽屋裏が丸見えの闘病記 

ノラ猫たちとさまよったボクの仏教入門 244 244 宗教を科学する(30)人間の楽屋裏が丸見えの闘病記 世の中には高い思索、すぐれた文章、覚悟のよさ、でちりばめられた闘病記も少なくない。芸術作品のように感動もし、勉強にもなるが、作品以前のデータで削…

243 宗教を科学する(29) 「日々を楽しく過ごすな!」

ノラ猫たちとさまよったボクの仏教入門 243 243 宗教を科学する(29) 「日々を楽しく過ごすな!」 病院にいても難病は治らない。妻とは離婚した。若い看護実習生と愛し合っても、将来に希望が持てない。体は不自由になっていくばかりだ。自殺を図るが失敗。…

242 宗教を科学する(28)離婚・自殺未遂・多情多恨  

ノラ猫たちとさまよったボクの仏教入門 242 242 宗教を科学する(28)離婚・自殺未遂・多情多恨 妻が自分にも実家にも無断でどこかへ行っている。 川口さんは腹が煮えくりかえる気持ちで外泊許可を取り、家にかけつけた。犬と猫がいるだけで妻はいない。二階…

241 宗教を科学する(27) 短髪・ペンダント・胴巻きスタイル 

ノラ猫たちとさまよったボクの仏教入門 241 241 宗教を科学する(27) 短髪・ペンダント・胴巻きスタイル 発病して4年。この難病ではまれにみるほど進行が遅い。川口さんにはまだ体力気力が残されていた。テレビで京都の国立宇多野病院が難病患者専門の指定…

240 宗教を科学する(26) 負けん気と難病の激突

ノラ猫たちとさまよったボクの仏教入門 240 240 宗教を科学する(26) 負けん気と難病の激突 苦悩の大小は比較できない、とフランクルは書いている。ナチの強制収容所と、全身マヒで死にいたる難病の生涯とどちらが苦しいかもむろん比べることはできまい。4…

239 宗教を科学する(25)死刑囚と態度価値

ノラ猫たちとさまよったボクの仏教入門 239 239 宗教を科学する(25)死刑囚と態度価値 先日、テレビをみていて、これもフランクルのいう「態度価値」なのか、と思わせられる場面に出会った。 死刑執行にまつわる遺族と死刑囚の心の動きを特集した番組で、多…

238 宗教を科学する(24) 創造価値・体験価値・態度価値

ノラ猫たちとさまよったボクの仏教入門 238 238 宗教を科学する(24) 創造価値・体験価値・態度価値強制収容所の悲惨を経験し解放されて帰ってきた仲間たちに、世間の人は「私たちも苦しんだ」と肩をすくめる。元囚人たちはそれを責任逃れとみなし、「自分…

237 宗教を科学する(23) 強制収容所を上回る新しい苦悩と不幸!

ノラ猫たちとさまよったボクの仏教入門 237 237 宗教を科学する(23) 強制収容所を上回る新しい苦悩と不幸!? フランクルの記録したアウシュビッツ強制収容所の囚人たちの心の動きをたどる。 ただショックの第一段階、苦悩にあえぐ第二段階。それに続く第…

236 宗教を科学する(22)「快楽への意志」より「意味への意志」 

ノラ猫たちとさまよったボクの仏教入門 236 236 宗教を科学する(22)「快楽への意志」より「意味への意志」 人間はなにより意味を求める動物だ。そこに意味を認めれば苦悩にも、厳しい人生にも耐えて生きていけるーーこれが強制収容所でフランクルが得た思…

235 宗教を科学する(21) 強制収容所の苦悩と失恋の苦悩と

ノラ猫たちとさまよったボクの仏教入門 235 235 宗教を科学する(21) 強制収容所の苦悩と失恋の苦悩とひとくちに苦悩といっても2種類あるらしい。人間らしいものと、そうでないもの。そして人間はつねに人間らしい苦悩をのぞむ存在だとフランクルは次のよう…

234 宗教を科学する(20) それでも人生にイエスと言う

ノラ猫たちとさまよったボクの仏教入門 234 234 宗教を科学する(20) それでも人生にイエスと言うフランクルの講演集『それでも人生にイエスと言う』には強制収容所の囚人仲間のたどる心理が3段階に分けて描かれている。『夜と霧』の記述と突き合わせて紹介…

233 宗教を科学する(19) ボクが強制収容所に入れられたら…?

ノラ猫たちとさまよったボクの仏教入門 233 233 宗教を科学する(19) ボクが強制収容所に入れられたら…? JR尼崎の脱線事故のとき、宗教関係者らしい人の慰めに、遺族の一人が、「神に愛されなくてもいい。子どもが元気に戻ってきてほしいだけだ!」と怒鳴…

232 宗教を科学する(18)ボクが人生に期待する、人生がボクに期待

ノラ猫たちとさまよったボクの仏教入門 232 232 宗教を科学する(18)ボクが人生に期待する、人生がボクに期待する希望も目的も失った囚人たちはどんな励ましの言葉にも反対し、どんな慰めにもそっぽを向く。何事にもがんばろうとしない。そのとき、カレが使…

231 宗教を科学する(17)現在を未来から眺めるトリック 

ノラ猫たちとさまよったボクの仏教入門 231 231 宗教を科学する(17)現在を未来から眺めるトリック きびしい生存条件の強制収容所を耐え抜いたのは頑丈な肉体の持ち主ではなく、むしろ繊細で感じやすい気質の人々に多かったとフランクルはいう。この人々は…

230 宗教を科学する(16)強制収容所の悲惨を救った妻との架空会

ノラ猫たちとさまよったボクの仏教入門 230230 宗教を科学する(16)強制収容所の悲惨を救った妻との架空会話 フランクフルの『夜と霧』はナチスによるユダヤ人強制収容所の体験と思索を綴った名著として名高い。飢餓、ガス室、重労働、拷問…。言語を絶する…

229 宗教を科学する(15) 『なぜ私だけが苦しむのか』――現代の

ノラ猫たちとさまよったボクの仏教入門 229229 宗教を科学する(15) 『なぜ私だけが苦しむのか』――現代のヨブ記 『なぜ私だけが苦しむのか』(岩波現代文庫)という本を買ってきた。即物的な題名がいい。ボクもよくこんなひがみっぽい気持ちになる。ボク以…

228 宗教を科学する(14) 宗教に「あの世」が必要なわけ。

ノラ猫たちとさまよったボクの仏教入門 228228 宗教を科学する(14) 宗教に「あの世」が必要なわけ。宗教に「あの世」はつきものだ。「前世」も欠かせない。教えを説くのに自分がいま住んでいる「この世」という現実世界のほかに「他界の存在」が必須条件な…

227 宗教を科学する(13) 自分をどこまで小さくできるか!? 

ノラ猫たちとさまよったボクの仏教入門 227227 宗教を科学する(13) 自分をどこまで小さくできるか!? 読書、思索、芸術に触れて心を耕し、より高度な神、信仰を、と前回柳澤桂子さんはいった。言いかえれば、自我の質を高める、ということになろうか。し…

226 宗教を科学する(12)「同情されている」と思う自我と不快 

ノラ猫たちとさまよったボクの仏教入門 226226 宗教を科学する(12)「同情されている」と思う自我と不快 ずいぶん前から何でもいいから信仰がほしい、といらいらしている。ボクなりに本を読んだり考えたりしているのだが、効き目が出てこない。死ぬ時、信仰…

 225 宗教を科学する(11) 人間以前の状態に戻る安らぎ

ノラ猫たちとさまよったボクの仏教入門 225 225 宗教を科学する(11) 人間以前の状態に戻る安らぎ 前回のつづき。 :河合隼雄さん(京大名誉教授でユング派の臨床心理学者)は信仰と無意識の関係をイスラム神秘主義を例に紹介している。=182回の『宗教…

224 宗教を科学する(10)宗教団体に属さない人の信仰の意味

ノラ猫たちとさまよったボクの仏教入門 224224 宗教を科学する(10)宗教団体に属さない人の信仰の意味もう一人の女性クリスチャンはまだ若く4人の子どもの母親である。牧師の夫とともに教会に尽くしていた。彼女もひそかに日記をつけており、死後『わが涙よ…

223 宗教を科学する(9)安らぎを得るツールとしての信仰

ノラ猫たちとさまよったボクの仏教入門 223223 宗教を科学する(9)安らぎを得るツールとしての信仰柳澤さんの「神」の中心イメージは、人間の力を超越した大きな自然の力なのだ。自然の摂理なのだ。その神は非常に残酷だが、私たちはどうすることもできない…

222 宗教を科学する(8)「他人を思いやる心」は「進化の法則」に反

ノラ猫たちとさまよったボクの仏教入門 222222 宗教を科学する(8)「他人を思いやる心」は「進化の法則」に反する 柳澤桂子さんの言葉をつづけよう。難病の苦しみのなかで紡いだこの生命科学者の思索は科学的だが、温かく澄んでいる。【やがて私の神に背い…

221 宗教を科学する(7) 「神や信仰」という業界用語のない宗教論

ノラ猫たちとさまよったボクの仏教入門 221221 宗教を科学する(7) 「神や信仰」という業界用語のない宗教論宗教というと、神とか信仰とかがつきものだが、そんな業界用語を使わずに、宗教の本質を追究したことで有名なのが近代神学の父といわれるシュライ…

220 宗教を科学する(6)「神の前で、神とともに、神なしに生きる」

ノラ猫たちとさまよったボクの仏教入門 220220 宗教を科学する(6)「神の前で、神とともに、神なしに生きる」【私の神とは】 前回の柳澤桂子さんの「私の神は簡単でない」発言もおもしろい。キリスト教でも仏教でも一言でくくれない「私の神」である。 彼女…

219 宗教を科学する(5)神秘体験――柳澤桂子さんとかモーツアルト

ノラ猫たちとさまよったボクの仏教入門 219219 宗教を科学する(5)神秘体験――柳澤桂子さんとかモーツアルトとか「友がみな われよりえらく 見ゆる日は 花を買いきて…」。啄木のようなそんなくたびれた気分になったとき、柳澤桂子さんの本は役立つ。元気づけ…

218 宗教を科学する(4)神秘主義者エックハルト

ノラ猫たちとさまよったボクの仏教入門 218218 宗教を科学する(4)神秘主義者エックハルト「何らかの目標を志し、それに向かって当人なりに真剣に生きるなら、それはすでに宗教である」というのが著名な社会心理学者フロムの宗教の定義だ。だからこの世を真…

217 宗教を科学する(3)神は信じないが、宗教は信じる!?

ノラ猫たちとさまよったボクの仏教入門 217217 宗教を科学する(3)神は信じないが、宗教は信じる!?「キリスト教や仏教は一神教だから嫌なのだ。俺は万物に霊がやどるというアニミズムがいい」と物知り顔で言った先輩がいる。仏教が一神教というのはまちが…

216 宗教を科学する(2)宗教の前身は「まじない」だった!?

ノラ猫たちとさまよったボクの仏教入門 216216 宗教を科学する(2)宗教の前身は「まじない」だった!? 前回の呪術は疑似科学であるという説は、呪術は科学と同じように非人格的、機械的、知的で、原因と結果が必然的に結びついているというものだ。しかし…