2009-01-01から1年間の記事一覧

193宗教と科学(17)近代科学が初めて味わう挫折

ノラ猫たちとさまよったボクの仏教入門 193193宗教と科学(17)近代科学が初めて味わう挫折「科学の進歩には限りがないが、いくら進歩してもその先は空だ」と高名な物理学者だった富田和久京大名誉教授が亡くなる少し前に言った。 いまから18年前、…

192宗教と科学(16)水墨画の空白、ガウディの公園の土くれ

ノラ猫たちとさまよったボクの仏教入門 192192宗教と科学(16)水墨画の空白、ガウディの公園の土くれ人間や動物は外界からさまざまな情報を取り入れて自分の中に「認識マップ」をつくる。このマップにめいめいの世界像を描き、そのなかの自分の立ち位…

191 宗教と科学(15)複雑で自由度の高い人間の「脳内マップ」 

ノラ猫たちとさまよったボクの仏教入門 191191 宗教と科学(15)複雑で自由度の高い人間の「脳内マップ」 前回までは宗教と科学の共通点を指摘した。次いで清水博東大名誉教授(生物システム学)が取り上げるのは生物としての人間にひそむ宗教的要素と…

190 宗教と科学(14) 宗教的自覚と科学的正解

ノラ猫たちとさまよったボクの仏教入門 190190 宗教と科学(14) 宗教的自覚と科学的正解 なぜ自分はいま、ここで、生きているのだろう? なぜほかのだれかでなくて、自分がここにいるのだろう? 長大な宇宙の歴史のなかで、一瞬の存在であるはかない…

189 宗教と科学(13)宗教を持ち、科学を持つ唯一の動物

ノラ猫たちとさまよったボクの仏教入門 189189 宗教と科学(13)宗教を持ち、科学を持つ唯一の動物 前回までの『論点としての』のほか、東大教授の清水博さんは専攻の「生物システム学」を媒介に宗教と科学の関わりをいろいろ書いている。古書店で『生…

188 宗教と科学(12) 世界は特定のルールで規定できるか!? 

ノラ猫たちとさまよったボクの仏教入門 188188 宗教と科学(12) 世界は特定のルールで規定できるか!? 前回まで紹介してきた清水博・東大名誉教授(生物システム学)の『論点としての〈生命〉』の結論部分を、例によってボクの半知半解の荒っぽい要…

187 宗教と科学(11) 「科学」、と称する独りよがり 

ノラ猫たちとさまよったボクの仏教入門 187187 宗教と科学(11) 「科学」、と称する独りよがり 近代科学の手法であるボトムアップ型論理は、要素(アトム)をまわりの環境や境界条件から切り離して調べ上げる。いわゆる自他分離型の論理である。この…

186 宗教と科学(10) 人類の脳のクセと限界 

ノラ猫たちとさまよったボクの仏教入門 186186 宗教と科学(10) 人類の脳のクセと限界 近代科学の論理体系には人間の脳の癖(生物的限界)が足かせとなり、情報の収集、観察、適用、予見、見通し、説明にもいくつかの限界、ひずみが生じることは前回…

185 宗教と科学(9) 神や仏を信じねばならない理由!?

ノラ猫たちとさまよったボクの仏教入門 185185 宗教と科学(9) 神や仏を信じねばならない理由!? 近代科学の特徴は前回述べたようにボトムアップ型論理だ。個から全体へ積み上げていく方式。個を分析し解明し、そのつらなりとして全体の分析・解明…

184 宗教と科学(8) 近代科学はなぜ強いか

ノラ猫たちとさまよったボクの仏教入門 184184 宗教と科学(8) 近代科学はなぜ強いか「いのち」をテーマに宗教と科学それぞれの問題点を簡潔に明快に、いわば科学的に切り取って教えてくれたのは東大名誉教授(生物システム学)の清水博さんの論文『…

183 宗教と科学(7) ユングとキュブラー・ロス

ノラ猫たちとさまよったボクの仏教入門 183183 宗教と科学(7) ユングとキュブラー・ロス 死後の生があると〈信じている〉のでない、〈知っている〉のだ、と精神科医キュブラー・ロスはことさらに強調する。それはロスの語ることが個人的な信念や想…

182 宗教と科学(6) 〈信じる〉と〈知る〉

ノラ猫たちとさまよったボクの仏教入門 182182 宗教と科学(6) 〈信じる〉と〈知る〉 宗教的な修行によって得られるビジョンや体験――そんな話を見たり、聞いたりすると、一般に、あれは「異常」ではないか、「病的」だ、などとマイナス評価で片づけ…

181 宗教と科学(5)ドイツの哲学者と日本の弓道師範の対決

ノラ猫たちとさまよったボクの仏教入門 181181 宗教と科学(5)ドイツの哲学者と日本の弓道師範の対決宗教と科学の対話はむつかしい。それに似ているのは「東洋と西洋」の対話だが、両者が歩み寄った具体例として、河合隼雄・京大名誉教授はドイツの…

180 宗教と科学(4)「神話の知」は亡くなった母と自分を結ぶ

ノラ猫たちとさまよったボクの仏教入門 180180 宗教と科学(4)「神話の知」は亡くなった母と自分を結ぶ「キリスト教」から「関係性の喪失」にいたるプロセスを臨床心理学者で京大名誉教授の河合隼雄さんはつぎのように書く。「キリスト教(一神教)…

179 宗教と科学(3) 近代科学が失った「関係性」

ノラ猫たちとさまよったボクの仏教入門 179179 宗教と科学(3) 近代科学が失った「関係性」 科学・技術の特徴は「普遍性」だ。世界にはいろんな地域・文化・宗教が存在するが、科学・技術はそれらの相違を超えて通用する。唯一の価値を押し付けてま…

178 宗教と科学(2)近代科学の創始者たちは「宗教」と共存

ノラ猫たちとさまよったボクの仏教入門 178178 宗教と科学(2)近代科学の創始者たちは「宗教」と共存 宗教と科学の間で妥協、歩み寄り、話し合いのようなものが成り立つのだろうか。だれでも思い浮かべるのは、「それでも地球は回っている」といって…

177 宗教と科学(1) 150億年前の記憶を抱くボクたち!?

ノラ猫たちとさまよったボクの仏教入門 177177 宗教と科学(1) 150億年前の記憶を抱くボクたち!?書店にいくと一般向けに書かれた「宇宙の誕生」や「命の起源」の解説書、エッセイの類がずらりと並んでいる。こんなに読む人が多いのだろうか。静…

176 生老病呆死(39) デモクリトス・マルクス・カント

176 生老病呆死(39) デモクリトス・マルクス・カント 岸根卓郎さんの「いのちと宇宙論」の締めくくりで、独演の舞台だ。 岸根さんは前回までのデータと情報論を合成して「宇宙には情報と物質の二極対立があり、しかも情報が先にあってそれにしたがって…

175 生老病呆死(38) アインシュタイン・ホーキング・プラトン

ノラ猫たちとさまよったボクの仏教入門 175175 生老病呆死(38) アインシュタイン・ホーキング・プラトン 京大名誉教授岸根卓郎さんの宇宙論はいよいよ「見えない宇宙」にはいっていく。前回に続きそのひとこと要約。 「現代の宇宙論は〈見える宇宙〉…

174 生老病呆死(37) さて、つぎはどの星に生まれようかな

ノラ猫たちとさまよったボクの仏教入門 174174 生老病呆死(37) さて、つぎはどの星に生まれようかな 作家玄侑宗久さんは国際分子生物学会のプレ・イベントで生命科学者の中村桂子さんと対談した。テーマは「命の不思議」だったが、両者の話の進め方…

173 生老病呆死(36)生物に命を与えた「目に見えない第三者」

ノラ猫たちとさまよったボクの仏教入門 173173 生老病呆死(36)生物に命を与えた「目に見えない第三者」とは? 生物を構成している物質をとことん分けて分けて分け尽すと、有機物の核酸(DNA)とタンパク質の二つになるそうだ。生物学的にいうと、こ…

172  生老病呆死(35) 人は自然の一部か? 人工自然か?! 

ノラ猫たちとさまよったボクの仏教入門 172172 生老病呆死(35) 人は自然の一部か? 人工自然か?! 前回の中村桂子さんの話を要約してもう少し続けよう。 「ゲノムで見ると、すべての生物が共通の祖先から生まれてきたということがわかる。同時にヒ…

171  生老病呆死(34) 人間と大腸菌とトウモロコシは濃い親

ノラ猫たちとさまよったボクの仏教入門 171171 生老病呆死(34) 人間と大腸菌とトウモロコシは濃い親戚筋 会社でも結局えらくなれず、金もなくセックス力も衰え、この世の滞在日数さえ先が見えてきたいまのボクに唯一、ほの明るい慰めと安心を与え…

170  生老病呆死(33) ナズナ(ペンペン草)の瞬間と永遠

ノラ猫たちとさまよったボクの仏教入門 170170 生老病呆死(33) ナズナ(ペンペン草)の瞬間と永遠よく見れば ナズナ花咲く 垣根かな(芭蕉)哲学者西谷啓治は著書「宗教と非宗教の間」(岩波現代文庫)でこの句の背景や深い意味を掘り下げている。ち…

169  生老病呆死(32) 世界三大詩人が見た「小さな花」

ノラ猫たちとさまよったボクの仏教入門 169169 生老病呆死(32) 世界三大詩人が見た「小さな花」 世界的な詩人たちは〈小さな花〉にどう向き合っているかーー名著「自由からの逃走」の著者エリッヒ・フロムはエッセイ集「TO・HAVE・OR・TO・BE」(所…

168  生老病呆死(31) 童謡が描く「来迎と往生」

168 生老病呆死(31) 童謡が描く「来迎と往生」日本人の宗教心の特徴をもっともよく表しているのは童謡「夕焼小焼」だと韓国のある宗教家が言ったそうだ。五木寛之がどこかに書いていた。その理由には触れていなかったが、CDを買ってきて聴いてみると、…

167  捨て犬・イルカ・コンビニの大量廃棄処分騒動

167 捨て犬・イルカ・コンビニの大量廃棄処分騒動 前回のシンポジュウムと同じころ、奈良康明・駒沢大学副学長はある仏教セミナーで動物や山川草木のいのちと仏教との関わりについて講演している。欧米と日本の考え方の違いなどもいくつか身近なエピソー…

166  臓器移植と自然破壊と「仏教」

ノラ猫たちとさまよったボクの仏教入門 166166 臓器移植と自然破壊と「仏教」 最近、臓器移植法をめぐる論議がまたまた騒がしい。約20年前のこのシンポジュウムでも、仏教大学の水谷幸正学長が「仏教の立場からどうなのだろう?」と問題提起している…

165  鳥獣の釣り堀とか、原爆投下とか

ノラ猫たちとさまよったボクの仏教入門 165165 鳥獣の釣り堀とか、原爆投下とか 欧米人は動植物の命を奪うのを「当然の権利」とし、日本人や仏教徒は「ごめんなさい」と謝る、それは日本人のやさしい心情だから、とシンポジュウムで奈良康明・駒沢大学…

164 「魚の活け作り」と「豚の丸焼き」――東西いのち事情

ノラ猫たちとさまよったボクの仏教入門 164164 「魚の活け作り」と「豚の丸焼き」――東西いのち事情 人間は動植物を殺して食べ、快適な暮らしのために害虫を殺し、花を殺して飾る。そのとき、せめて「人間の当然の権利」と思わず、「申し訳ない…」と感…