2011-01-01から1年間の記事一覧

269 死の哲学(10)哲学がはじめてとりあげた「死者論」

ノラ猫たちとさまよったボクの仏教入門 269 269 死の哲学(10)哲学がはじめてとりあげた「死者論」 キリスト教の〈復活〉はキリストという特別な神の子に起こったできごとだった。264回の十字架上のイエスと神との問答も、神とイエスというスーパースター同…

268 死の哲学(9)〈死〉から〈死者〉へ。時間論の転換。

ノラ猫たちとさまよったボクの仏教入門 268 268 死の哲学(9)〈死〉から〈死者〉へ。時間論の転換。ひとくちに〈死〉といっても、そのイメージには、「死・死後・死者」、とある。死も、死後も、自分では経験できない。しかし、死者は、死者の記憶は、否応…

267 死の哲学(8)亡き 妻と二人三脚の「死の哲学」

ノラ猫たちとさまよったボクの仏教入門 267 267 死の哲学(8)亡き 妻と二人三脚の「死の哲学」「死の哲学」を完成させるためにはほんものの〈死〉の実感が必要だった。どうすればよいのか。行き詰まっていた田辺元にふいに展望が開けた。妻の死がきっかけだ…

266 死の哲学(7)〈死〉を実感し〈哲学〉する方法を求めて

ノラ猫たちとさまよったボクの仏教入門 266 266 死の哲学(7)〈死〉を実感し〈哲学〉する方法を求めて 「死」は哲学でいちばん重要なテーマなのに、つねに「永遠の課題」であり、いまだに未解決のままなのはなぜだろう。 その答えは簡単だ。だれも自分の死…

265 死の哲学(6)『実存協同』をボクも実践していた!?

ノラ猫たちとさまよったボクの仏教入門 265 265 死の哲学(6)『実存協同』をボクも実践していた!?『メメント モリ』のなかで田辺元は「死の哲学はまだ未熟で、簡単に要約することもむつかしい。だから禅の公案を手引きに説明してみよう」と切り出している…

264 死の哲学(5)2人称の死と小林秀雄

ノラ猫たちとさまよったボクの仏教入門 264 264 死の哲学(5)2人称の死と小林秀雄 田辺元の「死の哲学」はおもに『生の存在学か死の弁証法か』と『メメントモリ』の2つの著作で構成されている。前者は恩師ハイデガーの「生の哲学」への反論のために書かれ…

263 死の哲学(4) 哲学も死者と語り合えるのか?

ノラ猫たちとさまよったボクの仏教入門 263 263 死の哲学(4) 哲学も死者と語り合えるのか? 中島義道先生の「死」への関わり方、考え方はとても魅力的だ。悲惨残酷を説いているのだけど、甘酸っぱいおセンチな気分になる。このことはのちに改めてとりあげ…

262 死の哲学(3) 死を棚上げした現代の哲学

ノラ猫たちとさまよったボクの仏教入門 262 262 死の哲学(3) 死を棚上げした現代の哲学哲学の最大のテーマはむかしから「死」と決まっている。「哲学とは死の練習」(プラトン)なのである。ほかに死に関してボクの好きな言葉を拾うと「われわれが必ず目指…

261 死の哲学(2)この世に在籍しながら「あの世のルール」を!

ノラ猫たちとさまよったボクの仏教入門 261 261 死の哲学(2)この世に在籍しながら「あの世のルール」を! 人間社会を成り立たせている政治や経済、法律や倫理や科学、道徳などが通用しないのが宗教である、その点では狂気、犯罪、死、衝動などと同類だと末…

260 死の哲学(1)「うめき声」は共通の言葉やルールからはみ出る

ノラ猫たちとさまよったボクの仏教入門 260 260 死の哲学(1)「うめき声」は共通の言葉やルールからはみ出る この世は苦だ。悟りなさい。 この世は空しい。執着してはいけません。 ものは考えよう。何でもいいように解釈したらよろしい。 ――これが仏教の教…

259 生老病呆死 (40)毒舌・反権威が売り物の「坊さん作家」2人

ノラ猫たちとさまよったボクの仏教入門 259 259 生老病呆死 (40)毒舌・反権威が売り物の「坊さん作家」2人閑話休題。しんきくさい話が続いたので、気晴らしに悪口でも書こう。 今東光と瀬戸内晴美はともに坊さん(女に坊さんはおかしいが)で作家、そして…

258 宗教を科学する(44) キリスト教のフランクル批判

ノラ猫たちとさまよったボクの仏教入門 258 258 宗教を科学する(44) キリスト教のフランクル批判フランクルが「人生から何をわれわれは期待できるかが問題ではなく、むしろ、逆に人生が何をわれわれから期待しているかが問題なのだ」といったことはよく知…

257 宗教を科学する(43)番外・大地震で女子アナと専門家の問答

ノラ猫たちとさまよったボクの仏教入門 257 257 宗教を科学する(43)番外・大地震で女子アナと専門家の問答 東日本巨大地震の悲惨な光景をテレビでみた。陸地に営々と培われた人間の営みがまたたく間に海になっていく。高校生ぐらいの少年が、「家族も家も…

256 宗教を科学する(42)「生きる意味」そのものはない

ノラ猫たちとさまよったボクの仏教入門 256 256 宗教を科学する(42)「生きる意味」そのものはないボクたちは日常を軽く見る。どうせ、時間のかけらだ。しかし、フランクルは日常こそが重要だという。日常はじつは、永遠と通じている。いやそれどころか、日…

255 宗教を科学する(41)世界で神以外に怖いものは何もない!

ノラ猫たちとさまよったボクの仏教入門 255 255 宗教を科学する(41)世界で神以外に怖いものは何もない!ずいぶん寄り道してきたが、もう一度、フランクルに立ち帰ろう。 名著『夜と霧』の結末には何かどんでん返しを見るような文章が置かれている。 「やが…

254 宗教を科学する(40) 哲学の神と宗教の神 

ノラ猫たちとさまよったボクの仏教入門 254 254 宗教を科学する(40) 哲学の神と宗教の神 再び川口さんの日記に戻る。 「見舞客らが、ひそひそ話をしている。ささやきが耳に入る。耳も聞こえないと思っているのだろう。 『ああして、車いすに1日乗っていら…

253 宗教を科学する(39) 凱旋将軍で150億年かなたの故郷へ

ノラ猫たちとさまよったボクの仏教入門 253 253 宗教を科学する(39) 凱旋将軍で150億年かなたの故郷へ川口さんの終焉の地、松山ベテル病院での日記を続けよう。「朝、食事時にスプーンを何度も落とす。もともと握力がゼロに等しいので当然だが、いまま…

252 宗教を科学する(38) 初めはいやいや、だんだんよくなる聖書

ノラ猫たちとさまよったボクの仏教入門 252 252 宗教を科学する(38) 初めはいやいや、だんだんよくなる聖書? 川口さんの信仰告白を続けよう。 「正直言って聖書は疑問だらけでしたが、不自由な体でむさぼるように読み続けた。ふしぎにふだん感じる苦痛も…

251 宗教を科学する(37)信仰告白――イワシの頭も信心からーー

ノラ猫たちとさまよったボクの仏教入門 251 251 宗教を科学する(37)信仰告白――イワシの頭も信心からーー さて、川口さんにもどろう。 聖書の次は教会だ。 「近くの教会に通うことにする。信者のみんなから植木鉢をいただく。愛の手を当たり前のように差し…

250 宗教を科学する(36)寝たきりの自分に神が与えてくれた天職

ノラ猫たちとさまよったボクの仏教入門 250 250 宗教を科学する(36)寝たきりの自分に神が与えてくれた天職『祈る』といえば、川口さんと似たような難病(進行性筋ジストロフィー)の患者、石川正一さんを思い出す。横道にそれるが、あわせて紹介しておきた…

249 宗教を科学する(35) 最後に残った話し相手は神だった

ノラ猫たちとさまよったボクの仏教入門 249 249 宗教を科学する(35) 最後に残った話し相手は神だった聖書に読みふけり、神に近づこうとする川口さんだが、むろんその歩みは一歩ずつゆっくりで、ときにはまわりの景色も気になる。「自分だけのことを思い、…

248 宗教を科学する(34)何がマザーテレサを動かしているのか?

ノラ猫たちとさまよったボクの仏教入門 248 248 宗教を科学する(34)何がマザーテレサを動かしているのか?施設から実家に戻って10カ月後、川口さんは洗礼を受ける。これからの日記には神に出会うまでの道筋が綴られている。その転機となったのはキリスト…

247 宗教を科学する(33) 身障者仲間からも孤立し、実家へ戻る 

ノラ猫たちとさまよったボクの仏教入門 247 247 宗教を科学する(33) 身障者仲間からも孤立し、実家へ戻る 盆休みで川口さんは家に帰省する。 「悪戦苦闘の連続。つい、介護してくれる母に当たり散らす。障害者といわれることにも抵抗をおぼえ、嫌になる。…

246 宗教を科学する(32) そろそろ宗教の出番?

ノラ猫たちとさまよったボクの仏教入門 246 246 宗教を科学する(32) そろそろ宗教の出番?川口さんの日記を続ける。 欲を出さず運命に任せて精いっぱい生きれば、悔いはない。この穏やかな気持ちも2週間たらずで様変わり。医者へ、看護婦へ、仲間の寮生へ…