204 宗教と科学(28)星の死骸がごろごろ…宇宙に明日はない!

    ノラ猫たちとさまよったボクの仏教入門 204

204 宗教と科学(28)星の死骸がごろごろ…宇宙に明日はない!  

「宇宙はものすごく小さい時からビューンと成長してきた。それは分かってきた。ところが、膨張宇宙論について半世紀以上前から研究されているが、膨張のきっかけ、原因についてはいまだにわからない。膨張の時期や宇宙の赤ちゃんの小ささについて、の研究は非常に進んでいるが、かんじんの〈なぜ膨張か〉についてはいまだになにもわからない。」(文隆先生)のだそうである。「こんなに科学が進んでもやっぱりまだわからないのか、だから言ったはずだ、そこには神のみわざが…」と宗教陣営を勢いづけそうな言葉である。

では、逆に宇宙の未来を科学はどう予測しているのだろう。
ここでも、二人の佐藤――文隆京大名誉教授と勝彦前東大教授の著書を適当に盗作させてもらおう。

いまの宇宙はいつまでも膨張し続けるのか、逆にある時を境に今度は縮み始めるのか。どちらに舵をとるのか、まったくわからない。両方の未来図を計測すると。

『膨張』説
宇宙はいまも膨張し続けている。遠方にある天体はしだいにわれわれの視界から消え去ろうとしている。天の川銀河の外には百億光年を超えるような遠方のものを含め無数の銀河が分布しているが、現在、これらは光速に近い速度でわれわれから遠ざかっている。百億年後のわれわれの子孫はこれらの銀河を観測するのは不可能だ。われわれが観測できる限界は「事象の地平線」といわれ、その距離は約百七十億光年とされる。今後、銀河たちは次から次へこの地平線を越えて、二度とわれわれの視界に戻ってこない。

われわれの住む天の川銀河は50億年後、隣のアンドロメダ銀河と衝突合体して、百億―百五十億年後には巨大な超銀河となる。千億年後、われわれの子孫がもし、この超銀河に生存しておれば、彼らは、宇宙とはこの超銀河と周りの空虚な空間だけ、と科学するだろう。「事象の地平線」の向こうに広がる無数の銀河や空間を科学は察知することはできないのだ。
さらに彼らは「この宇宙がビッグバンで始まった」ということは千億年前の古文書で〈仮説〉として知っていても、科学的根拠、観測的根拠は見出せない。
なぜならーー彼らの科学は自分たちの住む超銀河のほかには他の銀河をひとつもみつけることができない、など三つの専門的な理由があげられる。
そして宇宙は年老い,輝くものもなくなっていく。星は燃え尽き、冷え切ってしまう。ブラックホールや光らなくなった星の死骸がごろごろと散らばるつながりのないさみしい宇宙になっている。やがてあらゆる構造をもつものは壊れ、もとのもくあみ、素粒子に帰っていく。

『収縮』説
宇宙に暗黒エネルギーなどの物質がたくさん存在すれば膨張はとめられ、Uターン、逆に収縮に向かう。銀河・星などのないのっぺらぼうの宇宙になり、密度は高くなり、すべての構造物は壊され、温度は1兆度まで上昇し、これまたすべてが、もとのもくあみ、赤ちゃん宇宙の昔にかえる。ビッグバン宇宙の時間を反転したものと限りなく近い状態が展開するのだ。

天才ホーキングの珍説がある。
宇宙が収縮に転じたときには宇宙の時間が逆戻りを始めると主張した。ある国際会議でこう講演した。「宇宙の膨張期にコップが机の上から落ち、コップの破片が飛び散り、コーヒーがこぼれても宇宙の収縮期には破片が元通りになり、コーヒーは戻る。また、われわれの脳に蓄積されていた記憶は宇宙の収縮期にはどんどん消えていくであろう」。聴衆はあっけにとられ、言葉を失った。それをみてホーキングは得意げににやりと笑った。しかし、二年後、ホーキングはこの説を取り下げた。簡単なモデルで宇宙の波動関数を計算していたらしい。

ここで宇宙全体の話からちょっと横道にそれてボクたちの身近な銀河や星たちの運命についてひとこと。
星にもそれぞれ寿命がある。短命なもので百万年、長命だとーー宇宙誕生時のころ生まれた星がまだまだ健在だという。短命の星はつぎつぎ爆発、更新されている。爆発すると、鉄、金、ウラニウム、などなど何十種類の元素がほんの一秒もかからない間にパッとできる。それが飛び散り、次の世代の星の中に取り込まれていく。
ところが、こんな生と死を繰り返すうちに銀河によっては新しい星を作る原料のガスがなくなってくる。新しい星は生まれず、かろうじて弱々しい光の老人星に支えられている高齢社会の銀河と、まだ若々しい銀河のふたつに分かれるのだ。むろん若い銀河の星も全員必ず老い、死んでいくけれど。

いずれにせよ、宇宙は膨張に進もうと、収縮をたどろうと生きのびる方法はないのだ。どっちみち、もとのもくあみ、に帰っていく。将来の科学はビッグバンの存在さえ確証することができないという。自分たちの住む「超銀河」だけを全体宇宙と思い込む科学の限界。ほどなく、光を失ってしまう銀河や星たち。―――こういう空の下で、いまを息づいているボクやノラたちって、何なんだろう。宗教や哲学は厚化粧でねちねち答えてくれるだろう。科学からは「そんな意味づけはわれわれの役割でない」とスッピンの貧しい言葉が返ってくるだけなのだろう。(つづく)