12 ふたりの女性活動家

ノラ猫たちとさまよったボクの仏教入門 12


12 女性活動家―ーー「思い切り泣く」「無残さを人間に見せつける」




妹と話してかえって不快な気分になったので、動物保護の活動をしている知り合いの女性に電話した。大阪府でお母さんと二人暮らしの30代の会社員のN子さん。彼女は会社への行き帰りに公園を通る。

公園はネコの捨て場になっている。夕方の帰り道はエサをねだる子猫に毎日のように遭遇する。豊かでない財布から避妊手術をしたうえで里親を探し、引き取ってもらっている。病弱、障害をもつ子猫を優先して保護しているので、引き取り手がみつかりにくい。

彼女の小さな二階家の一室は貰い手のない猫が常時十数匹いる。母親も理解してくれているが、これ以上はお金も身も心ももたない。公園を通るときは、猫の鳴き声が聞こえないように耳をふさいで、「ネコと出会いませんように」と祈りながら、一気に走りぬけるのだそうだ。

 私の電話を聴いた彼女は「ほんとにつらいですね。私も車にひかれたノラ猫をよくみます。そんなとき、<人間が悪い、ネコちゃん、ごめんね>、とあやまりながら、わーん、わーん、と声をあげて思い切り泣くんです。泣くしか方法がないもの…」といった。

  もうひとりは京都の40代の会社員Y子さん。N子さんを優しい情緒派とすると、こちらは学生時代から動物実験の授業に反対し、卒業後も警察や保健所など行政と交渉しながら動物保護の実践活動をラディカルに展開している。こわもての理論的行動派だ。

自宅でもノラ猫だけでなく、犬やアライグマ、キツネなど数十匹の動物をゲートで保護している。いずれも飼い主が捨てたり、行政機関に殺処分を依頼してきた動物たちを引き取った。ゲートの住み心地という問題もあるが、安易な殺処分の犠牲にしたくないからという。阪神大震災では仲間を組織して活躍し、そのとき保護した犬も現在4匹いるそうだ。動物保護のNPOを立ち上げたり、里親運動も幅広くすすめている。

 彼女はぼくの電話に、「かわいそうに…」と型どおりにいったあと、「まあ、保健所にもっていかれて、行政機関をまわされたあげく殺されるのに比べたら、どちらがかわいそうかわからないけど、」と怒ったようにふきげんに言った。

 私が「死骸は植え込みにあった…」というと、「だれかがかわいそうにおもって運んだのでしょう。でも、車道に放っておくのもいいんです。車に次々ひかれるでしょ。無残さを人間にみせつけてやればいいんです。少しは人間もノラ猫の運命を考えるかもしれませんから」。

ぶっきら棒な、身もふたもない言い方に、Y子さんのノラへの愛情と日ごろのうっぷんの大きさを感じた。